恵比寿のスタジオ

所在地:東京都渋谷区
主要用途:店舗、スタジオオフィス、住居
構造:RC造
敷地面積:159.13㎡
延床面積:392.95㎡
竣工:1994年

都市のつぶ

現代都市東京のインフラストラクチャーによる人の移動とそのスピードは、牧歌的な集落の頃からは想像を絶する程の膨大な量に達しており、感覚的にも物理的にもほぼ限界にきているように思える。都市が機能する限り、その動きは永久にとどまる所を知らない。そのことを考えただけでも目が眩みそうだが、実際その典型的な施設である「駅」の乗降客を一日観察しているだけでも東京という街の凄さを肌で感じることができる。

JR線恵比寿駅は、近くに「恵比寿ガーデンプレイス」ができたこと、埼京線が接続されたことにより、ここ1・2年で最も変貌をとげた駅の一つである。駅から「恵比寿ガーデンプレイス」へは直接「動く歩道」が伸び、駅に隣接して超高層オフィスビルや駐車場ビルが次々に建てられている。今回与えられた敷地は、この駅に対し垂直に構えた位置にあり、一日の目まぐるしい動きをそれこそ肌で感じることのできる場所であった。用途は、1階に飲食、2・3階にオフィス、4・5階に住居という典型的な都市型複合プログラムであった。計画的に留意した点は、近隣のスケールにそぐわない超高層ビルのような巨大な「都市のつぶ(構成因子)」を批判し、通常スケールの建物が人の移動量やスピードにも負けることのない「存在感」を充分持ち得ることを力強い表現により示すことであった。その結果、意匠的にはJR線側と前面道路側に同様のファサードを与えるということをヒントに、斜めの面が直方体を引き裂くような強い表現を与える事とした。構造的には線路敷からの制約があり、かなり困難を極めたが、結果的には前面道路側に偏心した位置に全体の重心をおき、線路側に対しかなりの部分をキャンティレバーにより支持するという方法をとった。

「動く歩道」からの見えを意識したのは事実であるが、最終的には目隠し用のフィルムがガラス面に張られたため、JR線側の表情は殆ど死んだものとなってしまった。逆に建物側からは一定速度で平行移動する不気味な人影だけが目に映る結果となっている。この事件については、たったフィルム一枚に建築の重要な意匠根拠が無意味にされた認めがたい事実として記憶にとどめておきたい。