大門のコンプレックス

所 在 地:東京都港区
主 要 用 途:各種店舗
構 造:鉄骨造
敷地面積:357.09㎡
延床面積:2,358.623㎡
竣 工:1993年

都市のアルコーブ

芝大門地域は古くから増上寺への参道と海岸線に平行に走る街道とが交差する結節点としての意味合いが強い界わいである。現在は幅員が拡張された国道と、浜松町を中心とした内陸から東京湾や羽田空港へ向かう人の流れのかなめの位置に当たり、都市的ポテンシャルは以前にも増して更に高められている。しかし、殆どの人が「通過」するという状況で、ふと足を止めたくなるような場所は全くというほど無かったのである。

今回の敷地はまさにその交差点に与えられた。当初の計画では、オフィス用途が最も好ましいという事で出発し着工したが、経済状況の急変に伴い用途はドラスティックに変更され、全館飲食系店舗に切り替えられたのである。この計画で意図された事は、都市の顔として建物高層部の外観はあくまで控え目に町並み全体のスカイラインを整えることを目論み、人の目線の集まる低層部には対照的に、賑わいのあるアーバンプラザを計画した点である。高層部については、ともすると西洋的素材である石や金属パネルが氾濫する東京の景観において、「漆」に代表される日本的「美」としての「塗り」を都市のコンテクストに表現する事ができないかというテーマが追求された。カーボンファイバーによるCFRC版の大型のパネルを採用し、ステンレス型枠の表面を徹底的に研磨する事でスムーズな表面を確保しつつ、フッ素樹脂を何層にも塗装する事で「漆」的な「まったり感」を表現するように努めている。低層部については、今まで「通過」しかなかった大門地区にちょっと寄りたくなるような「都会の精神的アルコーブ」が出現したことで、その後、人の流れは大きく変わったと言われている。毎日夕方になると多くの人がプラザに集まり、次々に中に吸いこまれてゆく、いわば「大門のブラックボックス」として有名な建物になってしまった。